一級建築士の製図試験で一発アウトのミスまとめ-独学だと気づけないかも-

一級建築士製図
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この記事はこのような方に向けて書いています↓

悩めるラクダ
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製図試験で不合格になる原因が分からない。

悩めるリス
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一級建築士の製図でミスがなくならない。

この記事では・・・
  • 一級建築士試験で一発アウトとなるミスをまとめました。
  • ミスが起こりやすいパターンを紹介します

 この記事の筆者は、2020年の学科試験で105点(125点満点)を獲得し、合格しています。合格点は88点でしたので、17点の余裕をもって合格しています。

 学習期間は1年程度です。

 初年度の製図試験は不合格。2021年に2度目の製図試験で合格しました!

 製図試験2回経験した分、知識やノウハウが蓄積されましたので、その情報を発信します。

一発アウトのミスを防げば8~9割の確率で合格する!

 一級建築士の設計製図試験では、採点結果が4つのランクにランク分けされます。

合格↓

  • ランクⅠ:「知識及び技能」を有するもの

不合格↓

  • ランクⅡ:「知識及び技能」が不足しているもの
  • ランクⅢ:「知識及び技能」が著しく不足しているもの
  • ランクⅣ:設計条件及び要求図書に対する重大な不適合に該当するもの

 令和3年度の試験者のランク別の割合を見てみると、ランクⅠ:35.9%、ランクⅡ:6.3%、ランクⅢ:26.9%、ランクⅣ:30.9%となっており、近年は毎年が大体同じような割合となっています。

 ランクⅢとランクⅣにさえならなければ、ランクⅠまたはランクⅡになるわけで、ランクⅡになる確率はランクⅠ(=合格)となる確率の1/5以下です。

 つまり、ランクⅢ、ランクⅣにさえならなければ8割以上の確率で合格できます。

 そして、ランクⅢ、ランクⅣになるのは、設計条件違反(室の不足など、課題文に示された条件に違反している)と、法令違反(「延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)と防火設備の設置」、「防火区画(異種用途区画、面積区画、竪穴区画等)」、「道路高さ制限」等)がある場合です。

 要するに、設計条件違反と法令違反さえしなければ、8割以上の確率で合格できます。

 ちなみに、守るべき法令も、すべて課題文に明示されていますので、「課題文に従ってさえいれば8割以上の確率で合格できる」と言い換えることができます。

 (尚、ランクⅡとランクⅠの分かれ目は「記述」と言われています。課題文や法令をすべて満たしていても、記述で、建築に関する知識があまりにも無い解答をしてしまうと、ランクⅡになる可能性が高くなります。)

 とはいえ、単純に「課題文に従う」と言っても、それが難しいんですよね、、、

 だから、製図試験では「エスキス終了時」と「作図終了時」にチェック作業をするのが通例となっています。

 それでも、試験中の時間に追われている中で行うチェック作業では、どうしても見落としが生じてしまうというのも事実です。

 そのため、この記事では、一発アウト(ランクⅢやランクⅣ)になってしまうミスと、本試験で起こりがちなミスのパターンを紹介します。

 起こりやすいミスのパターン・傾向を知っておくことで、時間に追われているときでも自分のミスを素早く発見できるようにしておきましょう。

一級建築士設計製図試験で一発アウトとなるミスと、ミスが起こりやすいパターン

自分用のチェックリストを作り、試験が始まると同時にエスキス用紙に書き出そう

 チェックすべき項目で忘れやすいものは、事前に自分でチェックリストを用意し頭にインプットしておきましょう。

 例えば、廊下幅、道路斜線制限、建蔽率のミスをしないために、試験が始まると同時に、エスキス用紙に「廊、斜、建」というようなチェックリストを書くのです。

 これを模試や問題演習のたびに繰り返し、習慣にすることで、本試験でも忘れずに法令のチェックをすることができます

作図を始める前までにつぶしておくべきミス

  • 建蔽率オーバー
  • 延床面積オーバー
  • 高さ制限(道路斜線、隣地斜線、北側斜線)違反
  • 2方向避難の避難距離違反
  • 居室の採光に必要な開口部、ヘリ空きの不足
  • 廊下の両側に居室がある場合は廊下の有効幅員が1.6m必要になる
  • 駐車場、駐輪場から敷地外を通らないと建物のエントランスへ行けない
  • 敷地内避難通路の確保
  • 動線交錯

建蔽率オーバー

 計画する建物の「建築面積」が、課題文で示されている「敷地面積」×「建蔽率の限度」をオーバーしていると一発アウトです。

やりがちなミス
  • バルコニーや庇が原因で建蔽率オーバーとなる

 縮尺1/400のエスキスをする前に、建物の建築面積を仮に算定してチェックしたほうが良いのですが、その時に余裕が50㎡くらいしかない場合は、庇やバルコニーを付けたときに建蔽率オーバーとなってしまう場合がありますので注意が必要です。

 1/400の本格的なエスキスを始める前と、エスキスが終わり作図を始める前に、計画している建物の建築面積を算定してチェックしましょう。

延床面積オーバー

 通常は課題文で「容積率の限度」が示されますが、それをオーバーしてしまうことはあまりありません。

 気を付けるべきは、課題文に「床面積の合計は、2,200㎡以上3,200㎡以下とする」などの床面積の指定がある場合です。

やりがちなミス
  1. 作図の直前に床面積の大幅な不足やオーバーに気づく
  2. 基準階の面積を大きくしすぎる

 1/400のエスキスが終わり、作図を始める直前で、延べ床面積の大幅な不足や大幅なオーバーに気づいてしまうこともありますが、そのタイミングで気付いたら修正にかなりの時間がかかってしまいます。

 そのため、1/400のエスキスで本格的に室の配置を始める前に、仮でも良いので、自分が計画している建物の延べ床面積を算定してチェックしておくのがおすすめです。

 大幅なオーバーや不足さえ防げば、10㎡程度の不足やオーバーであれば、短時間で修正することが可能です。(バルコニーやピロティ通路は床面積に参入しないため、下図のような方法で面積の調整ができます。)

 また、基準階はなるべく小さい面積で納める必要があります。

 例えば3~7階が基準階となる建物があったとして、基準階の1フロア当たりの面積を10㎡増やしただけでも、建物全体では10㎡×5階分(3~7階)=50㎡の面積が増加します。

 そのため、基準階の面積の増減には、敏感になる必要があります。

高さ制限(道路斜線、隣地斜線、北側斜線)違反

やりがちなミス
  1. 道路斜線の「2Aかつ35m以内の緩和」を忘れる
  2. 道路斜線の検討時、河川、湖、防火上有効な公園の幅を道路幅員に算入し忘れる
  3. 道路側にバルコニーや屋外階段や庇があるとき、道路斜線のセットバックによる緩和をミスする
  4. 建物の高さが20mを超えているのに、隣地斜線の検討を忘れる
  5. 第一種、第二種中高層住居専用地域内なのに、北側斜線の検討を忘れる

 高さ制限に抵触して不合格になる人は例年結構いると聞きます。

 これ、ミスに気づきにくいんですよね、、、

 特によくあるのが「3.道路側にバルコニーや屋外階段や庇があるときに道路斜線のセットバックによる緩和をミスする 」です。

 セットバックによる緩和に使えるのは、道路境界線から建物までの最短距離ですので、道路側にバルコニー、屋外階段などが出っ張っている場合は、その分だけ緩和に使える距離が短くなります。(参照サイト:https://www.megasoft.co.jp/3d/setback_regulation/height_street_setback.php

 道路側に バルコニー、屋外階段などが出っ張る可能性があるときは、最初から(エスキスの初期の段階から)建物を、バルコニーや屋外階段の分だけ余計に道路から離しておくのがおすすめです。

 次によくあるのが、箇条書き↑の4.と5.に示した、「隣地斜線、北側斜線の検討忘れ」です。

 隣地斜線や北側斜線は検討しなくても明らかに問題ないような演習課題も多いため、本試験でこれらの検討が必要な課題が出された場合に検討を忘れることがあります。

 検討忘れを防ぐためには、どんな課題が出た場合でも、必ず隣地斜線、北側斜線を検討する習慣をつけておくことが大切です。

 例えば「3階建ての建物、用途地域は商業地域」のような課題が出た場合でも、道路斜線の検討をするついでに、「隣地斜線OK、北側斜線OK」などとエスキス用紙に書き留めておくのです。

 多少面倒ですが、10秒もかからないはずです。毎回の課題でこれをやっておくことで、本当に隣地斜線や北側斜線の検討が必要な課題に遭遇したときに忘れずに対応することができます。 

2方向避難の避難距離違反

やりがちなミス
  • L字型の建物を設計したとき等に重複距離がオーバーする

 一級建築士試験の製図試験で出題される規模の建物では、2階以上の階で必ず2方向避難の「歩行距離」と「重複距離」の規定に満足している必要があります。

 「歩行距離」が限度をオーバーすることはあまりないのですが、「重複距離」は、たまにオーバーします。

 特に、建物のかたちがL字型の場合は注意が必要です

 このミスを防ぐためには、1/400の本格的なエスキスを始めるに、重複距離のチェックをしておくことが大切です。

居室の採光に必要な開口部、ヘリ空きの不足

やりがちなミス
  • 居室の採光に必要なヘリ空きが足りなくなる(特にバルコニーや庇の出が生じるとき)
  • スペースがなくて、面積の小さい居室を、外壁に面して配置することができなくなる

 まず、原則として、居室には、原則として、採光ができる開口部(窓)が必要です。

 例外的に、窓が必要とならない場合もありますが、その場合はいろいろとめんどくさい規定がかかってくるので、一級建築士の試験では、基本的には居室に窓を設けた(≒居室を外壁に面して設ける)方が無難です。

 採光は、ちょっとだけややこしいのですが、簡単に言うと、「窓の大きさが大きい方が有利!=光がたくさん入るから」、「窓から隣地境界線までの距離が長い方が有利!(光が入るのを邪魔するものがないから)」です。

 普通の居室の場合は、基本的には窓を設けさえしていれば問題ない場合が多いと思います。(優先順位は高くありませんが、隣地が公園、道路等でない場合は、ヘリ空きを5mくらい取っていた方が無難です)

 ただ、例外的に、ヘリ空きや窓の大きさをシビアに考えるべき居室があります。 

 それが、共同住宅、学校、病院等の居室です。

 これらの用途の時は、採光が確保されていなければ一発アウトと考えた方が良いでしょう。

 そのため、製図試験の課題がこれらの用途の場合は、窓から隣地境界線までのヘリ空きを、シビアに考えておく必要があります。(窓の大きさは極力大きくしておけばOK)

 特にミスが起こりやすいのが、窓から隣地境界線までのヘリ空きです

 採光におけるヘリ空きは、窓の上にあるバルコニーや庇の先端から隣地境界線までの離れ距離を採用するため、バルコニーや庇が出ることを考慮せずに、建物から隣地境界までの離れを決めると、採光が確保できなくなり、一発アウトになります。

 そのため、採光に必要な離れ距離をもとに建物の配置を決めるとき、最初から庇やバルコニーの出を考慮し、2mくらい余裕をもって、建物の配置を決めるのがおすすめです

 次にミスが起こりやすいのは、「外壁に面したスペースがすべて他の室で埋まってしまい、面積の小さい居室を配置するスペースがなくなってしまう」というミスです。

 このミスを防ぐためには、「非居室はなるべく外壁に面していない内側に配置する。外壁に面して室を配置するなら、短辺を外壁に面して配置し、外壁を無駄遣いしないようにする」といったことを意識するのが有効です。 

廊下の両側に居室がある場合は廊下の有効幅員が1.6m必要になる

やりがちなミス
  • 廊下の両側に居室の出入り口があるときに、廊下の幅が不足する

 廊下の両側に居室の入り口がある場合は、廊下の幅員が有効で1.6m必要となります。(学校の場合はもっと広い)

 そのため、 廊下の両側に居室の入り口がある にもかかわらず、廊下幅を壁芯間の距離で2mに設定していると、柱が廊下側にはみ出てくることを考慮したときに、廊下の有効幅員が1.6m未満となってしまい、アウトになります。

 このミスについては、エスキスがある程度完成した後に気づいても対処ができますので、作図前のチェックで忘れずに確認することが必要となります。

駐車場、駐輪場から敷地外を通らないと建物のエントランスへ行けない

やりがちなミス
  • 駐車場や駐輪場から建物へ通じる道を、植栽や駐車場がふさいでいる。

 当然ですが、 駐車場、駐輪場から敷地内だけを通って建物のエントランスへ行ける必要があります。

 しかし、駐車場の車を停める場所や、植栽が、駐車場や駐輪場から建物へ通じる道をふさいでしまっていることが、たまにあります。

 このミスも、エスキスがある程度完成した後に気づいても対処ができますので、作図前のチェックで忘れずに確認することが必要となります。

敷地内避難通路の確保

やりがちなミス
  • 敷地内通路を、植栽や駐車場、屋外階段がふさいでいる。

 一級建築士試験に出る規模の建物では、幅1.5m以上の敷地内通路が必要となります。

 しかし、駐車場や植栽、屋外階段が邪魔になって、敷地内通路の幅を1.5m確保できない!ということがたまにあります。

  このミスも、エスキスがある程度完成した後に気づいても対処ができますので、作図前のチェックで忘れずに確認することが必要となりますが、屋外階段によって敷地内通路がふさがれてしまった場合は、エスキス完成後に修正するのは難しくなります。(建物の配置・ヘリ空きを調整する必要が出てくるため)。

 そのため、屋外階段を設置しようとするときは敷地内通路のことを思い出すように、「屋外階段=敷地内通路のことを考慮する」というようにセットで覚えておく必要があります。

動線交錯

やりがちなミス
  • A部門の室からA部門の他の室へ移動するときに、B部門を通らないと行けない

 動線計画として、同部門の室には、他の部門を通らずに行けるようにしておく必要があります。

 たとえば、店舗部門のカフェから、同じく店舗部門の書店へ移動する際に、他部門である住居部門を通過しないといけないとすると、住居部門に住んでいる人たちは生活しづらいですよね。これを動線交錯と言います。

 建物を設計するうえで動線交錯は避けなければなりませんが、時間に追われている製図試験では、結構動線交錯が起こります。

 これを防ぐためには、本格的な室の配置を決める前(1/400のエスキスを始める前)に、大まかに部門ごとのエリアを決めておく必要があります

 各部門の室の面積の合計×1.4くらいの広さで、建物の中に大まかにエリアを配置しておくのです。

作図を始める前までにつぶしておくべきミスー立体構成編ー

  • 丘立て柱
  • 長すぎる片持ち梁
  • 階段が梁に当たる
  • 梁下にダクトを通すスペースが不足する

架構(柱と梁)を想像しよう

 製図試験を受けるとき、忘れてしまいそうだけど絶対に忘れてはいけないことがあります。

 それが、梁の存在です。

 一級建築士試験の製図ではラーメン架構の建物を採用する場合が多いと思いますが、柱は平面図に出てくるので存在を忘れることはありませんが、たまに、平面図には出てこない梁の存在を忘れてしまう人がいます。

 プランニングするときは、必ず下図のように、柱と梁でできた架構を想像するようにしてください。↓

拙いモデリングですが、参考までに(;・∀・)

 製図試験を受ける上では、柱と梁が建物を支え、それに支えられて壁や天井、床があるというイメージを持ってみましょう。

 梁があるのを忘れてしまうと、吹き抜けや大空間、屋上庭園や階段など、複数の階にまたがった要素を計画するときに、ミスが生じやすくなります。

 立体的にとらえる能力は建築士に必須の能力であるため、ミスをすると一発アウトになりやすいです。

 設計をするときは常に「梁をどのように架けるか」を意識するべきです。

 また、柱と梁は表裏一体です。

 採点者は、柱がある場所には梁があり、梁がある場所には柱があると考えますので、意図的に梁をなくす場所には、図面にその旨を補足として書く必要があります。

丘立て柱

 交流ホールやレクリエーションルームのような面積の大きな室が課題文で要求される場合、室内に柱が出てこないような設計を要求されることがあります。

 それに対応するために柱を抜いた時、梁の長さが長くなってしまうため、プレストレスとコンクリート梁を使用することで対応することが多いのですが、下階で柱がない位置に上階では柱があると、よろしくないです。(これを丘立て柱と言います。下図参照)

 理由は、上階の柱・荷重を支えるためにプレストレストコンクリート梁が必要以上に大きな力を負担しなければならないためです(通常は下階の柱が上階の柱の荷重を負担する)。

平面図
断面図(図の見た目だけでも、プレストレストコンクリート梁が真ん中で折れそうでしょう)

 基本的には、柱を抜いてプレストレストコンクリート梁を使用した場合は、丘立て柱を作らないように、プレスとレストコンクリート梁を使用した室(図では交流ホール)の上には室を作らず屋根にしてしまうのが無難です。

 もし、仕方なく丘立て柱を作る場合は、丘立て柱を支える梁の断面寸法を十分に大きくする等の措置を、補足として図面に書いておくことが、最低限必要になるのではないかと思います。(でも危ない橋を渡るよりは最初から丘立て柱を作らないようにした方が良いです)

長すぎる片持ち梁

 吹き抜けや屋上庭園等を計画する際に、片持ち梁を使用するときがあります。

 片持ち梁の注意点として、そもそも片持ち梁が発生することに気づかないパターンも多いです。

 片持ち梁については下図のような場合をイメージしていただければ幸いです。

屋上庭園を作ることで片持ち梁が発生する場合。 黒い点は柱です。
吹き抜けを作ることで片持ち梁が発生する場合。 黒い点は柱です。

 このとき、片持ち梁が長すぎると、構造的に不適切な計画となってしまうため、片持ち梁が長くなりすぎないようにする必要があります。

 具体的には、3m以下を目安とすればよいでしょう。

 吹き抜けや屋上庭園を計画する際は、「片持ち梁が発生していないか」ということ、「その長さが3m以上になっていないか」ということを必ずチェックしましょう。

階段が梁に当たる

 階段は、基本的に4つの柱で囲まれた□の中に収めるようにしましょう。

 下図のような感じです↓

平面図。 黒い点は柱です。
平面図。黒い四角い点は梁です。

 4つの柱で囲まれた□から階段がハミ出ると、階段を上っている途中に歩行者が階段にぶつかってしまいます。

 下図のような感じです↓

平面図。ダメな例。黒い点は柱です。
ダメな例の断面図。黒い四角い点は梁です。階段を登り切る途中で梁にぶつかってしまう。

 これも、梁の存在を忘れなければ防げるミスです。

 似たような話で、エレベーターも柱で囲まれた□の中に収めるようにしましょう。

梁下にダクトを通すスペースが不足する

 空調方式に単一ダクト方式を採用したり、大空間の空調にダクトを用いたりする場合、梁下にダクトを通すスペースを確保する必要があります。

 簡単に言うと、梁の下端から天井材の下端までを500㎜程度確保する必要があります。

 そのため、空調にダクトを用いる場合は、階高を決める際に、梁の下端から天井材までの空間を考慮する必要があります

 特にミスが多いのが、課題文で天井高が指定されている(天井高6m以上 等)大空間に、プレストレストコンクリート梁などの梁せいが大きい梁を用いる場合です。

 梁下のスペースを考慮せずに階高を決めてしまうと、ダクトを通すスペースが確保できず、空調ができなくなってしまいますので、注意が必要です。

作図した後必ずつぶすべきミス

  • 防火区画のミス
  • 延焼ライン内の開口部(防火設備)のミス
  • 上下階不整合
  • 屋根の描き忘れ

最終チェックしやすいエスキスを作ろう

 ここで紹介するミスを防ぐためには、最終チェックしやすいエスキス→防火設備や特定防火設備、屋根などを全て表現したエスキスを作ることが重要です。

 エスキス時の方が作図時よりも焦りが少なく、プランニングの過程が頭に残っており、色ペンの使用が可能なためミスが起こりにくいです。

 エスキス時に作図要素を全て表現しておくことで、最終チェックでエスキスを見ながら図面をチェックするときにミスに気づくことができます。

 筆者は家具以外は基本的にエスキスで表現していました。

防火区画のミス

やりがちなミス
  • 面積区画と竪穴区画の理解(区別)ができていないことによるミス
  • 竪穴区画が必要な吹き抜けに竪穴区画を忘れる
  • 腰壁やカウンターがあるときに、防火防煙シャッターをつけ忘れる
  • 防火防煙シャッターに扉をつけ忘れる
  • スパンドレルを作り忘れる

 防火区画のミスもよくあります。

 1つ目のミスは、面積区画と竪穴区画の理解(区別)ができていないことによるミスです。

 階段や吹き抜けなどの縦に通じる穴と他を区画するのが竪穴区画、面積1500㎡以内に区画するのが面積区画で、竪穴区画の扉は防火設備以上、面積区画の扉は特定防火設備とする必要があります。

 ですが、基本的には、区画を構成する扉は、竪穴区画でも面積区画でもすべて特定防火設備にしておくことをお勧めします

 理由は、竪穴区画が面積区画を兼ねている場合が多いからです。

 例えば、1階にエントランスがある場合、1階と2階の2層吹き抜けであれば竪穴区画が必要ありませんが、区画を全くしなかった場合、1階と2階が吹き抜けを介してつながってしまい、面積1500㎡を超えてしまい面積区画に違反しますので、特定防火設備(防火防煙シャッターなど)での区画が必要となります。

 2つ目のミスは、竪穴区画が必要な吹き抜けなのに区画し忘れるミスです。

 避難階の上下階一層のみに通じる吹き抜けについては竪穴区画が免除されているため、1階と2階の2層吹き抜けの場合は竪穴区画が不要で面積区画のみが必要ですが、それに慣れすぎてしまうと他のパターンの吹き抜けでも竪穴区画を忘れてしまう場合がありますので注意が必要です。

1階が避難階(エントランスがある)の場合・・・

  • 1階と2階の2層吹き抜け→竪穴区画は不要
  • 2階と3階の2層吹き抜け→竪穴区画が必要
  • 1階~3階の3層吹き抜け→竪穴区画が必要

 3つ目のミスは、吹き抜けに面して腰壁やカウンターがあるときに、防火防煙シャッターをつけ忘れるというミスです。

 コンクリートの壁は区画として使えますが、腰壁やカウンターは、上が空いているため、火の通り道となってしまいます

 作図で急いでいると、腰壁やカウンターを作っているのを忘れて普通の壁と思い込んでしまい、そこに防火防煙シャッターをつけるのを忘れてしまうことがよくあるので、注意が必要です。

 4つ目のミスは、防火防煙シャッターに閉じ込め防止の扉をつけ忘れるミスです。

 防火防煙シャッターが作動し閉まってしまうと、中の人が逃げることができなくなってしまうため、防火防煙シャッターには人が逃げるための扉をつけておかなければなりません。

 もちろん、その扉も特定防火設備としておく必要があります。

吹き抜けに面する腰壁、カウンターに防火防煙シャッターをつけ忘れる/防火防煙シャッターに閉じ込め防止の扉をつけ忘れる

 5つ目のミスは、スパンドレルを作り忘れるミスです。

 吹き抜けを作った場合によくあるミスです。

 吹き抜けに接する部分の開口部は、忘れずに防火設備のマークを書いておきましょう

 防火区画についてのよくあるミス5つを紹介しました。

 知ってさえいれば防ぎやすいミスだと思うので、忘れずチェックし、防ぐようにしてください。

 エスキスに特定防火設備を全て描いておき、最終チェックでエスキスを見ながら特定防火設備の位置、個数をチェックするといった対策もおすすめです。

延焼ライン内の開口部(防火設備)のミス

  

やりがちなミス
  • 外壁が回り込んだ位置が延焼ラインに入っていた時、防火設備をつけるのを忘れる

 外壁が折れ曲がっている位置や回り込んでいる位置には、防火設備をつけるのを忘れがちです。

 忘れやすいということを覚えておくことと、外壁を指でなぞりながら、延焼ラインに入っている開口部に防火設備を設置しているかどうかをチェックすることが、このミスを防ぐのに有効です。

 また、エスキスに防火設備を全て描いておき、最終チェックでエスキスを見ながら防火設備の位置、個数をチェックするといった対策も有効です。

延焼ライン内の開口部(防火設備)のミス

上下階不整合

やりがちなミス
  • 柱、階段、エレベーターの上下階不整合

 これは誰もが認める一発アウトのミスです。

 製図を勉強し始めた初期によくやってしまうミスではありますが、本番で緊張していると、ミスしてしまう確率が上がります。

 防ぐためには、作図を始めたら補助線を引いた後すぐに柱を書くこと下書きを始めたらまず最初に全ての階の階段とエレベーターを描くこと作図で間違えて消しゴムを使う場合でも基本的に柱と階段とエレベーターは消さないことが重要です。

屋根の描き忘れ

やりがちなミス
  • 下階の屋根となる部分の描き忘れ
  • 屋上庭園に屋根をつけてしまう

 上階の方が下階よりも狭い場合、上階の平面図に下階の屋根が出てきます。

 その屋根を描き忘れると、屋根なしの建物になってしまいますので、大減点を覚悟しなければなりません。(もしかしたら一発アウトにはならないかも)

 また、急いでいると、下階では屋上庭園なのに、上階の平面図では屋根を描いてしまうというミスも起きてしまいます。

 「屋上庭園は屋根や庇のない部分の面積が〇〇㎡必要」といったような要求が課題文でなされていた場合、このミスも手痛いです。

 これらのミスを防ぐためには、エスキスに屋根を忘れずに表現しておくことが重要で、そうすることで、最終チェックでエスキスと図面を見比べたときにミスに気づくことができます。

エスキスのスピードを上げるためのアイデア集も公開していますので、読んでみてください。↓

参考記事:【一級建築士 設計製図試験】エスキスを短時間で仕上げるコツ

独学に行き詰った人へ:おすすめの予備校(選び方)

 独学だと不安な人、独学に行き詰った人は、予備校や通信講座の利用も検討してみましょう。

 設計製図対策のための予備校、通信講座の選び方は以下の通りです。

  • 金額の安さ
  • 添削があるか
  • 合格者数・合格率が良いか

詳細:【一級建築士】好コスパおすすめ通信講座・予備校を比較(ランキングで紹介)

まとめ

 本記事で紹介したミスをまとめます。

  • 建蔽率オーバー
  • 延床面積オーバー
  • 高さ制限(道路斜線、隣地斜線、北側斜線)違反
  • 2方向避難の避難距離違反
  • 居室の採光に必要な開口部、ヘリ空きの不足
  • 廊下の両側に居室がある場合は廊下の有効幅員が1.6m必要になる
  • 駐車場、駐輪場から敷地外を通らないと建物のエントランスへ行けない
  • 敷地内避難通路の確保
  • 動線交錯
  • 丘立て柱
  • 長すぎる片持ち梁
  • 階段が梁に当たる
  • 梁下にダクトを通すスペースが不足する
  • 防火区画のミス
  • 延焼ライン内の開口部(防火設備)のミス
  • 上下階不整合
  • 屋根の描き忘れ

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