2級建築士の設計製図試験を初めて受けるけど、独学でも合格できるの?
学科試験は独学だったけど、製図対策も独学にするかどうか迷っている...
製図試験に独学で合格するためのコツやスケジュールを知りたい!
そんな悩みを解決します。
二級建築士の学科試験を乗り切ったら、次は製図試験対策の勉強を始めないといけません。
「製図対策になるべくお金をかけたくない!」「でも確実に合格したい!」そんな人は多いと思います。
この記事の筆者は一級建築士の資格を持っています。
製図試験に「独学で挑むか」それとも「学校か通信講座を利用するか」というのは、建築士試験を受験する人の共通の悩みです。私も悩みました。
結論から申し上げますと、二級建築士の製図試験に独学で合格するのは可能ですが、多くの人には独学はおすすめできません。
(ちなみに学科試験は、製図試験よりも独学で合格する難易度が低いです。)
この記事を読むことで、二級建築士試験の”設計製図”試験対策の正しい方法を知ることができます。
独学にするか、予備校・通信講座を利用するか、迷っている人は最後まで読んでください。
二級建築士 設計製図試験の内容をざっくり解説
まずは二級建築士試験の内容をざっくり解説します。
- どんな試験なのか
- 課題となる建築物の用途・構造
- 試験本番はどんな流れで、何を提出するのか
- 合格率
「そんなこと分かってるよ!」という人は、こちらのリンクから本題に飛んでください。(ページ下部に移動します。)
どんな試験?
二級建築士試験の設計製図試験では、5時間の試験時間の中で、1棟の建物を設計・作図します。
作図した1棟の良し悪しで、合否が決まります。
作図した図面の出来に応じて、ランクⅠ~Ⅳに格付けされ、ランクⅠの人だけが合格です。
ランク | ランクの説明 | 受験生の割合(令和5年度試験結果) |
ランクⅠ | 【合格】 「知識及び技能」を有するもの | 49.9% |
ランクⅡ | 【不合格】 「知識及び技能」が不足しているもの | 5.7% |
ランクⅢ | 【不合格】 「知識及び技能」が著しく不足しているもの | 37.9% |
ランクⅣ | 【不合格】 設計条件・要求図書に対する重大な不適合に該当するもの | 6.5% |
この記事の本題(独学で合格できるか)を早く読みたい人は、こちらのリンクから飛んでください。(ページ下部に移動します。)
課題となる建築物の用途・構造
(ちなみにご存知とは思いますが、RC造とは鉄筋コンクリート造です。)
二級建築士が設計できる範囲の中から出題されます。
二級建築士が設計できる範囲
- 小規模な公共建築物(店舗や美術館、学校など)
- 中・小規模な一般建築物
3年に1度、RC造が出題されます。
6月の中旬くらいまでに、課題となる用途・構造などが公表されます。
用途 | 構造(階数) | |
令和6年度 | 観光客向けのゲストハウス(簡易宿所) | RC造 |
令和5年度 | 専用住宅 | 木造2階建て |
令和4年度 | 保育所 | 木造2階建て |
令和3年度 | 歯科診療所併用住宅 | RC造3階建て |
令和2年度 | シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい | 木造2階建て |
令和元年度 | 夫婦で営む建築設計事務所を併設した住宅 | 木造2階建て |
平成30年度 | 地域住民が交流できるカフェを併設する二世帯住宅 | RC造(ラーメン構造)3階建て |
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試験の基本的な流れ
5時間の試験時間の中で、上記のプロセスをこなし、解答を完成させないといけません。
ちなみに設計製図試験における「エスキス」とは、問題文に書いてある条件を整理し、設計案を考えるプロセスのことです。
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提出するのは回答用紙1枚(図面・計画の要点・面積表)
基本的には上記の3つが、A2の解答用紙1枚の中に含まれています。
エスキス用紙は採点対象ではないので回収されません。
そのためエスキス時点でどんなに良い計画ができていたとしても、作図が完成しなかったら合格できません。
要求される図面の種類は、年度によって変わります。
今までの例では、RC3階建ての課題では3階平面図、木造2階建ての課題では2階床伏図兼1階小屋伏図が要求されていました。
また、RC3階建ての課題では部分詳細図、木造2階建ての課題では矩計図が要求されていました。
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製図試験の合格率は50%前後
設計製図試験の過去の合格率は、50パーセント前後で推移しています。
比較的高い合格率に見えますが、これは受験者の多くがしっかりとした準備を行っているためです。
製図試験を受験できるのは学科試験合格者だけですから、
学科に合格する実力・勉強の習慣を身に着けている人でも、受験者の半分が不合格になってしまうのが製図試験です。
設計製図試験の合格率 | (参考)学科試験の合格率 | |
令和5年度 | 49.9% | 35.0% |
令和4年度 | 52.5% | 42.8% |
令和3年度 | 48.6% | 41.9% |
令和2年度 | 53.1% | 41.4% |
令和元年度 | 46.3% | 42.0% |
独学で設計製図試験に合格できるか?
ここからが本題です。
独学でも設計製図試験に合格できるのかについて、以下のような流れで説明します。
- 独学でも合格できるが短期間で合格したい人は学校や通信講座の利用がおすすめ
- こんな人は独学でも合格できる
- こんな人は学校か通信講座の利用がおすすめ
- 二級建築士の設計製図試験に合格するための条件
独学でも合格できるが短期間で合格したい人は学校・通信講座の利用がおすすめ
「設計製図試験も、お金がかからない独学で対策したい!」という人は多いです。
しかし筆者の結論としては・・・
二級建築士の製図試験に独学で合格するのは可能ですが、短期間で合格したい人(次の製図試験で一発で合格したい人)には独学はおすすめできません。
なぜなら独学では、
- 正しい作図手順・エスキス手順を調べること
- 知識がある人に図面添削を依頼すること
が難しいからです。
こんな人は独学でも合格できる
以下の特徴にたくさん当てはまる人は、独学で合格できる素質があります。
設計製図対策の勉強を始めた当初は、図面を完成させるのに10時間くらいかかることもあります。
また独学の場合は、正しい作図手順・エスキス手順を調べるのも手探りになります。
試行錯誤を繰り返す必要があり、強靭なメンタルが必要です。
さらに独学の場合は手探りでの勉強となるため、学校や通信講座を利用する人よりもたくさんの勉強時間が必要となります。
自己管理を徹底して確実に勉強時間を確保できないと合格できません。
- 「何回か受験して受かったら、それで良い」
- 「今年の製図試験は受けずに、たっぷり勉強して来年の製図試験を受ける!」
という人は勉強期間が長く確保できるので、独学で合格できる可能性が高まります。
最後に、次のような人も、正しい作図手順・エスキス手順を身に着けたり情報収集したりしやすいので、独学で合格しやすくなります。
- 「情報収集が得意な人」
- 「周りに教えてくれる人がいる人」
- 「図面を書き慣れている人」
こんな人は学校か通信講座の利用がおすすめ
以下のような特徴に当てはまる人は、予備校・資格学校や通信講座を利用するのがおすすめです。
特に、学科試験に合格した年に製図試験にも合格したいという人は、2か月しかない勉強期間の中で情報収集や勉強を進めなければならないため、独学での合格は難易度が高いです。
二級建築士の設計製図試験に合格するための条件
順番に説明していきます。
二級建築士 設計製図試験の成績は、4つのランクで決められます。
合格できるのはランクⅠの人だけです。
ランク | ランクの説明 | 受験生の割合(令和5年度試験結果) |
ランクⅠ | 【合格】 「知識及び技能」を有するもの | 49.9% |
ランクⅡ | 【不合格】 「知識及び技能」が不足しているもの | 5.7% |
ランクⅢ | 【不合格】 「知識及び技能」が著しく不足しているもの | 37.9% |
ランクⅣ | 【不合格】 設計条件・要求図書に対する重大な不適合に該当するもの | 6.5% |
「課題で指定された条件に違反している」「図面や記述が未完成」「法令違反」などの大きなミスをしてしまったときに、ランクⅢ、Ⅳになります。
ランクⅡは、「大きなミスはないけど、知識が足りていない」合格一歩手前の人です。
ここでのポイントは、ランクⅡは約5%(ほとんどいない)ということです。
つまり二級建築士設計製図試験は、本試験で「大きなミスをせずランクⅢ、Ⅳを回避」しつつ「図面と記述を完成」させれば、高確率で合格できます。
(逆に言えば、他人より良いプラン・綺麗な図面を作ることの重要度はあまり高くありません。)
本試験で大きなミスをしないためのポイントは、次の2つです。
自分で「早く図面を仕上げるための作図手順」や「早くプランをまとめるためのエスキス手順」を調べるのに時間がかかるし、正しい情報かどうかを判断するのも難しいです。
また、図面の添削はココナラなどを利用して依頼することもできますが、信頼できる依頼先を探すのが難しいです。
そのため短期間で合格したい人は、独学ではなく通信講座や予備校を利用するのが、賢い選択と言えます。
【独学者必見】製図試験に合格するためのコツ
以下の記事で、時間を作る方法やモチベーションを保つ方法について解説しているので参考にしてください。
参考記事:【モチベ維持と時間確保】二級建築士試験の勉強スケジュール
最初は作図に時間がかかっても気にしない
二級建築士試験の制限時間は5時間です。
図面を作図する以外に、エスキスの時間も必要です。
そのため時間内に回答を完成させるためには、3時間以内に図面の作図を完成させ、見直しをする必要があります。
しかし設計製図試験の勉強を始めた頃は、作図するだけで10時間くらいかかってしまうこともあります。
作図に時間がかかりすぎてしまうことで、不安に耐え切れず、勉強のモチベーションが下がってしまう人もいます。
勉強を始めた初期は、作図に時間がかかる人は珍しくないし、練習を繰り返すうちに速く作図できるようになっていくので、最初は作図に時間がかかっても気にしすぎないことが重要です。
時間の使い方を工夫する
設計製図試験は、1課題を解くのに5時間かかるため、まとまった時間が無いと勉強しにくいです。
そのため時間を工夫して使えるかどうかで、勉強の効率に差が出やすいです。
作図やエスキスのプロセスを小分けにして、スキマ時間でも練習できそうなものを探していきましょう。
私が製図試験を受けたときは、以下のような工夫をしていました。
- 土日祝など時間を好きに使えるときは、課題の読み取りからエスキス、作図まで通して練習する。
- 仕事終わりは、「課題の読み取りとエスキスだけ」「作図だけ」など、2~3時間でできるトレーニングをする。
- 昼休みなどのスキマ時間は、「計画の要点の記述内容の勉強」「家具レイアウトの作図練習」「階段の作図練習」など短時間でできるトレーニングをする。
反復練習
設計製図の対策では、自分に合った作図手順・エスキス手順で、反復練習をすることが重要です。
毎回同じエスキス手順・作図手順で行うことで、予期しないミスを防ぐことができます。
最初は、テキストや学校・通信講座で教えられる基本的なエスキス手順・作図手順を忠実に再現できるように、何度も練習します。
基本的な手順が身に付いたら、細かい部分を自分好みにカスタマイズしていきましょう。
このようにして「自分の解き方(自分のエスキス手順・作図手順)」を確立します。
「自分の解き方(自分のエスキス手順・作図手順)」を確立したら、身体に染みつくまで何度も練習します。
毎回同じ手順で、問題の読み取り→エスキス→エスキスチェック(見直し)→作図・記述・面積表作成→作図チェック(見直し)を行います。
試験本番も、練習で行っていたエスキス・作図手順を絶対に変えずに、解くようにすることが重要です。
練習でやってこなかったようなエスキス・作図手順で解くと、予期しないミスの原因となってしまいます。
添削を受ける
設計製図試験では、「課題条件の違反や法令違反をしない」ということが一番重要です。
添削を受けなかったら、条件違反や法令違反に関する知識が不十分なまま、本試験の日を迎えてしまう可能性が高いです。
添削を受けることで、自分では気づけなかった条件違反や法令違反のパターンを知ることができます。
そもそも添削を受けなければ、自分の描いた図面が合格なのか不合格なのかを判断することも難しいです。
模試を受ける
苦労して模試の点数が上がればモチベーションになるし、模試の点数が低ければ自分にプレッシャーをかけることができます。
また、本番の雰囲気を体験し、時間配分や緊張感に慣れることができます。
さらに、他の受験生と比べた自分の立ち位置・実力を正しく認識することができます。
本試験までのスケジュール|製図の勉強はいつから始める?
製図の勉強を始める時期はいつから?
「今年の製図試験を受ける!」という人は、学科試験が終わり自己採点で合格してそうだったら、すぐに設計製図試験の勉強を始める必要があります。
勉強期間としては2カ月と少しです。
来年以降に製図試験を受ける人は、受験する年の2月ごろから勉強を始めれば大丈夫です。
勉強期間としては7カ月程度です。
(大手資格学校の、長期の設計製図講座が、2月中旬ごろから始まります。)
設計製図対策の具体的なスケジュール
設計製図対策のスケジュールは以下の通りです。
- 7月:作図練習(3時間での作図完成を目標)
- 8月~試験当日:問題演習(課題文読み取り・エスキス・作図・計画の要点・見直し といった一通りのプロセスを5時間以内にできるようにトレーニングする)
- 9月上旬:公開模試を受験する
詳しくはこちらの記事をご覧ください。↓
参考記事:【モチベ維持と時間確保】二級建築士試験の勉強スケジュール
まとめ
二級建築士の設計製図試験に短期間で合格したい人や、一発合格を狙いたい人には、独学はおすすめしない。
また、二級建築士の設計製図試験に合格するためのコツは次のとおりです。
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