私は一級建築士の設計製図試験に、1回目は不合格、2回目で合格しました。
不合格だった年と合格した年を比べて大きく変化したのが、「本番でミスをしない考え方・試験の進め方」が身についたところです。
この記事では、2年間の勉強で得た経験をもとに、
- 合格者が共通して実践している考え方
- 本番で失敗しないための具体的な方法
を紹介します。
実際に2度受験して、合格するために大切だと思ったことを紹介します。
一級建築士だけでなく、二級建築士の設計製図試験にも共通する内容です。
全体編

- 本番では「新しいこと」を絶対にやらない
- 完璧を目指さない。優先順位をつける
本番では「新しいこと」を絶対にやらない
本番と模試では、練習中に試して添削を受けた方法だけを使うようにしましょう。
練習中と違うやり方でエスキスや作図をすると、気づかず法令違反をしてしまう確率が高くなります。
私自身、練習中に試したことが無い設計をした結果、気づかず法令違反をしてしまい、1回目の受験は不合格になりました。
裏を返せば、あらゆるパターンを練習して、添削を受けておくことが大切です。
NG例
- 練習中に設計したことが無いスパンで柱を配置する
- 練習でピロティ駐車場を使用したことが無いのに、本番で使用する
- 練習中と本番で、エスキスや作図の手順を変える/手順を省略する
完璧を目指さない。優先順位をつける
設計製図試験は時間との勝負です。優先順位が低い項目は、場合によっては諦める覚悟が必要です。
優先順位が低いことに時間を使うくらいなら、エスキス後や作図後のチェック時間を確保しましょう。
また、作図中はよほど大きな描き間違いでない限り、消しゴムを使わないようにしましょう。
図面は完成すると、小さなズレや多少のはみ出しは目立たなくなります。
最終チェックが終わってから、まだ気になるところだけ、消しゴムを使って修正することをおすすめします。
- 面積の指定が「〇〇㎡以上」となっている室などの面積
- 「〇〇からアクセスできる」「〇〇の眺望を確保する」など、位置の指定
- 問題用紙に記載がある建築基準法や関係法令の規定
- 面積の指定が「約〇〇㎡」となっている室は、指定された面積より多少小さくても致命傷にはなりにくい
- 重要ではない室(面積の指定が無くて席数や人数の指定も無い室やPS等)は、適切な面積を設定した方が良いのは当然だが、最悪の場合は小さくても存在していれば大丈夫
- 作図時に下書きとして薄く描いた線は、完成したら目立たなくなるので消さなくても大丈夫
- 作図時に多少線がズレても、完成したら目立たなくなるので修正しなくて大丈夫
- 壁の包絡も、消しゴムを使って修正するほど優先順位は高くない
課題文読み取り編

- 試験開始したら、まず法令チェックリストを書く
- 問題用紙は「チェックリスト」として使う
試験開始したら、まず法令チェックリストを書く
試験開始と同時に、まず答案用紙に名前と受験番号を書きます。
その後、課題文を読み始める前に、法令チェックリストをエスキス用紙に書きましょう。
このチェックリストは、エスキスが終わって作図を始める前の最終確認で使用します。法令の見落としを防ぐためにも、毎回同じ内容を書いておくのがおすすめです。
私の場合、「建、容、高、光、ア、廊、防、特、延、2、重、通」と書いていました。
それぞれの意味は次のとおりです。
- 建 : 建ぺい率
- 容 : 容積率、延べ面積の指定
- 高 : 道路高さ制限、隣地高さ制限、北側高さ制限
- 光 : 居室の採光
- ア : 歩道や車椅子駐車場から建物出入口までのアプローチ
- 廊 : 廊下幅(バリアフリー法の特別特定建築物や、柱の出っ張りに注意。仕上げ材厚さも考慮)
- 防 : 防火設備(延焼ライン内の建具、スパンドレルなど)
- 特 : 特定防火設備(防火区画となる建具など)
- 延 : 延焼ライン
- 2 : 2方向避難(2以上の直通階段、室から階段までの歩行距離)
- 重 : 重複距離
- 通 : 避難経路となる敷地内通路
問題用紙は「チェックリスト」として使う
課題文を読みながら、問題用紙を3色程度の蛍光ペンでマーカーすることで、エスキス後や作図後にチェックリストとして活用できるようにします。
これにより、要求条件の見落としや描き忘れを防ぐことができます。
私が実践していた方法は次のとおりです。(色は何色でも良いです。)
課題文を読むとき
- オレンジ:手戻りすると致命的な項目
延べ面積・階数・建ぺい率・高さ制限・階段・EV・2層以上にわたる大空間・吹き抜け・屋外施設などの指定はオレンジ色でマーカーします。
これらの2層以上に影響する立体要素や、建物の外形を決める要素は、建物全体の計画に影響するため、後から修正するとプランを1から考え直すことになりかねません。そのため他とは区別してオレンジでマーカーします。 - ピンク:室の条件に関する項目
各室の面積、利用人数、室の位置などはピンク色でマーカーします。 - イエロー:作図時に描く必要がある項目
家具や什器、問題用紙「Ⅱ.要求図書」の特記事項で図示を要求されている項目など、エスキスでは描かないけど図面への記載が必要な内容は、イエローでマーカーします。
チェックするとき
- ラフプラン作成後(エスキス中)
本格的なプランニングの前に、オレンジの項目を確認し、確認済みのものはシャープペンシル等で斜線を引いて消していきます。 - エスキス完成後(作図前)
作図前にオレンジ・ピンクの項目をチェックし、確認できたものは赤ボールペン等で斜線を引いて消していきます。 - 作図完了後
作図まで終わったら、全てのマーカー項目を確認し、確認できたものは紫のマジックなど目立つペンで斜線を引いて消していきます。
このようにチェックするタイミングごとに使用する色を変えることで、「どこまで確認したか」が一目でわかり、確認漏れを防ぐことができます。
エスキス編

- エスキスを毎回同じ手順で行う
- 作図で間違えにくいように書く
- 柱・階段・EV・吹き抜け・上階屋根は、全階同時に計画する
エスキスを毎回同じ手順で行う
エスキスは、毎回同じ手順で進めることが大切です。
手順を固定することで、法令の検討漏れを防げます。
例えば、第一種住居地域の場合は北側高さ制限の検討は不要です。
しかし、その場合でも、「検討しない=何も書かない」ではなく、エスキス用紙に「北:なし」など、あえて書く癖をつけておきます。
同様に、隣地高さ制限の検討が不要な場合でも、エスキス用紙に「隣:なし」などと書く癖をつけておきます。
検討不要でもエスキス用紙に書く習慣を付けることで、検討が必要な課題が出題されたときに「検討自体を忘れていた」というミスを防ぐことができます。
作図で間違えにくいように書く
エスキスは、作図時にどれだけ急いでいても迷わず描ける状態に仕上げることのが大事です。
特に防火設備(〇防)や特定防火設備(〇特)を描く位置・数は、一目で分かるようにしておきましょう。
私の場合は、〇防を描く位置にはピンクマーカー、〇特を描く位置にはオレンジマーカーで、エスキス用紙に点を付けていました。
線ではなく点を付けていたのは、〇防・〇特の正確な位置と数がわかるようにするためです。
大まかな位置しか分からないようなエスキスだと、作図で急いでいるときに書き漏れが発生しやすくなります。
また、エスキスでは窓と外壁を明確に区別できるように仕上げることも大事です。
例えば、エスキスでは外壁として考えていた部分を、作図時に窓として描いてしまうと、本来必要な〇防を描き忘れ、法令違反になることがあります。
このミスを防ぐため、私は窓にする範囲が明確に分かるように、エスキス用紙に青マーカーで印をつけていました。
柱・階段・EV・吹き抜け・上階屋根は、全階同時に計画する
柱・階段・EV・吹き抜け・上階屋根などの2層以上にまたがる要素は、必ず全ての階同時にプランニングしましょう。
上下階でこれらの位置を間違えると、今までプランニングした室配置などを大幅に修正することになります。
そのため、エスキスで2層以上にまたがる要素を計画するときは、全ての階に同時に描くことが大切です。
作図編

- 通り芯と柱を全階同時に描く
- フリーハンドで描けるパーツを増やす
通り芯と柱を全階同時に描く
作図では、まず全ての階の平面図と断面図に通り芯を描き、その後、全階の柱を一気に書くことをおすすめします。
柱の位置を間違えると、柱に接する壁などの修正も必要となったり、上下階の不整合で不合格となったりすることがあり致命的です。
全階を見比べながらまとめて柱を描くことで、位置の間違いを防げます。
また、一度描いた柱を消すと、描き直すときに位置を間違えたり、描き忘れたりすることがあります。柱を修正するときは、周囲との位置関係を確認しながら慎重に行いましょう。
フリーハンドで描けるパーツを増やす
設計製図では、作図時間をできるだけ短縮し、その分をチェック時間に充てることが重要です。
そのため、定規を使わなくてもきれいに描けるパーツを、できるだけ増やしておくことをおすすめします。
私の場合、階段・EV・丸椅子・トイレ・PSなどは、全てフリーハンドで描いていました。これらの小さなパーツは、仕事の休憩時間など隙間時間に練習するのもおすすめです。
特に1cmくらいの短い線は、フリーハンドでもそれなりに綺麗に、定規を使うよりも短時間で描けます。
私が受験した年の課題は「共同住宅」だったため、3LDKや2DKなどの住戸プランもフリーハンドで描けるように、仕事の休憩時間を利用し繰り返し練習していました。
まとめ

これまでの内容をまとめると、建築士の設計製図試験で大切なことは次の3つです。
- エスキスや作図の手順を固定して体に染みつかせる。
- 描き間違いや検討漏れのリスクを徹底的に無くす。
- 作図スピードを上げ、見直しの時間を死守する。

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